語らい1


目深に帽子をかぶって釣り糸を垂れている人がいる。寒そうにマフラーを首に巻き、釣り竿を抱えるように糸を垂れている。この人のいる岸の下には、いろんな生き物がいる。いや生き物というには生き物らしくない。むしろ意志をもった崩れゆくもの、というように言った方が適切かもしれない。「生物」として存在していた時から、「生物」ではなくなり「もの」になっていくものの「意志」といえばいいのだろうか。それは土中にあり、耳を澄まさなければ聞こえない。ここで作家は意識を地下へ地下へと沈下させ、描かれているようなおどろどろとしたものを、ユーモアも交えながら描いていく。作家が世に出したものたちと対話し交歓する。この小さい作品にはとてもユニークな形をしたものたちがいる。カニのようなカニでないような、そして、その口とおぼしきところにはナマズのような、ナマズでないような・・・・。そして、そこに釣り針。死者や崩壊していくものたちとの対話は、こうして楽しく交わされる。
 先日はサイの涙を見に、お客さんがいらっしゃった。昨日(20日)は中野さんと御伴侶ちえさまのお料理をワインそして楽しいご友人たちといただいた。
 会期はあと10日ほど。このサイやゾウたちともお別れすることになる。