1月12日(日)
山村由紀さんの『青の棕櫚』出版を記念して、詩誌「風箋」の会員による朗読会が開催されます。
詩集から
夕餉
夕日が沈みはじめ
外よりも暗くなった台所に
海のどこかで捕まった魚が四尾
トレイの上で口をひらいている
その眼の奥には 最期に見た
漁船の旗や漁師の顔が貼りついていそうなので
見ない
死んだ魚たちと同じ部屋でひとり
わたしは箸と小皿をならべる
ガスコンロが あおじろい舌を出す
夕日が沈んだ空は急速に黒く冷え
固いつぼみのような月の
ひかりが
魚たちに淡く届く 魚たちのからだから
半透明の欠片が滲み出し 食卓のまわりをさまようと
ひ ひら
かたちをくずしながら
月へと泳ぎはじめる